音響専門書籍・文献紹介vol.6  <br>「岩宮眞一郎著:図解入門 よくわかる 最新 音響の基本と仕組み」

音響専門書籍・文献紹介vol.6
「岩宮眞一郎著:図解入門 よくわかる 最新 音響の基本と仕組み」



音響専門書籍・文献紹介では、弊社R&D担当者それぞれが日頃参考にしている書籍や、注目している論文などをご紹介します。
紹介した書籍や文献へのリンクも掲載していますので、興味を持たれたらご利用ください。


岩宮眞一郎著
『図解入門 よくわかる 最新 音響の基本と仕組み』


秀和システム
2007.5.20初版第1刷発行
ISBN 978-4-7980-4106-3
https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798041063.html

キーワード:音響工学、物理学、音響心理学、聴覚、建築音響、オーディオ機器、音のデザイン


これは、学生当時の私が音響に興味を持って、最初に読んだ書籍です。

高校の物理の授業で、音が空気の振動によって伝わること、振動が三角関数によって表せること、逆相の波は打ち消されることなどは学んでいました。しかし、当時演習問題として扱っていたのは正弦波ばかりでしたが、実際に聞く音はほとんど正弦波ではありませんし、複合音がどのように聞こえるかということは教わりませんでした。例えば音楽を聴くときに、同時に複数の楽器が演奏されていても、なぜピアノはピアノの音、バイオリンはバイオリンの音…と聞き分けることができるのかなど、不思議に感じることが多く、本を読んでみようと思ったのが音響の勉強を始めるきっかけでした。

この本を読んで、周波数スペクトルという概念に初めて触れ、それが音色にどのように影響するかを知りました。また、今となっては当たり前に思うことですが、国際単位系(SI)などによって表される物理量と、人間の感覚と対応する心理量があると知り、「どのように感じるか」を定量的に表すことの難しさを理解しました。タイトルにもあるようにほとんどの項目が図解で示されており、音の物理学、心理学、聴覚などについて、音響の知識がない人にも非常に理解しやすく記されています。音について網羅的に、簡潔にわかりやすく書かれていますので、深く勉強したい項目を見つけるのにもおすすめです。

この書籍のとても良いと思うところのひとつが、節目に挟まれているコラムです。技術書には淡々と説明がなされているものも多いですが、本書では節の関連項目について、いろいろな角度から補足されています。コラムの内容は学術的なものから身の回りに起こる現象、さらにはジェフ・ベックやジミ・ヘンドリックスなど意外なギタリストの名前が登場するものもあり、飽きずに楽しく読むことができます。雑学に近いような項目もあり、いろいろな現象に興味を持ったり、それを知識と結びつけるきっかけになったりするような、非常におもしろいコラムばかりです。

また、映像メディアの中での音を使った演出や、製品や空間の音をデザインすることなど、少し特殊な話題についても記されています。普段はあまり意識することがないかもしれませんが、生活の中に根付いた音がどのように作られているかについて書かれており、多くの人に興味深く読んでもらえるのではないかと思います。

デジタル信号処理などについての記述は多くはありませんが、音についての知識が詰め込まれており、出版当時のことを考えると、表紙に書かれている『この一冊で「音」のすべてがわかる!』というのも過言ではないと感じます。音響の勉強を始めたい方だけでなく、少しでも音響に興味を持たれている方は、ぜひ手に取ってみてください。


クロフダ
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