Review
レビュー
A8000の全てを一新した新設計
A8000は、当時開発したベリリウムドライバーによって、非常に低い歪み率と高い応答性を兼ね備えたモデルでした。その特性は音にも現れており、圧倒的にクリアで伸びやかな中高域と、鋭い立ち上がり・立ち下がりの低域は、替えの効かない特別なサウンドでした。しかしA8000で振動板に採用してきたトゥルーベリリウムは、材料調達の事情により製造継続が困難となり、終売せざるを得ませんでした。
2019年の発売から7年。この間に得た新たな研究成果と、ダイヤモンド振動板を採用した「A10000」の開発で培ったノウハウにより、ベリリウム以外の素材でも「A8000」の音を実現するだけでなく、さらに高めたモデルを開発することができました。
本モデルにつけた「DC」の名称は、音楽用語のダ・カーポ「Da Capo」(譜面の最初に戻るという意味)に由来しています。
現時点の技術と研究成果を注ぎ込み、全パーツを新規設計・選定した、全く新しい「A8000」です。
トゥルーマグネシウム振動板を搭載した超低歪DUの開発
<振動板として理想的な素材へ>
振動板に求められるのは、駆動力に対して余計な変形を起こさず、瞬時に定位置へ戻る「動きやすさ」と「歪みにくさ」の両立です。前モデルA8000は発売から7年、振動板に採用してきたトゥルーベリリウムが材料調達の事情により製造継続が困難となりました。そこで開発チームが新たな振動板素材として選んだのがマグネシウムです。
物体自体の変形しやすさで比較すれば、マグネシウムはベリリウムに及びません。しかし、マグネシウムはアルミニウムの約3分の2という軽さを持つため、重量を増やすことなく振動板そのものに厚みを持たせることができます。曲げ剛性は板厚の3乗に比例するため、厚みを確保できるマグネシウムは、ドーム形状による構造的な補強と組み合わせることで、素材単体の物性を超えた高い曲げ剛性を実現できます。本製品ではこの特性をさらに引き出すため、「トゥルーマグネシウム」振動板を採用しています。純マグネシウムの課題である強度を補うため独自の合金化を施し、軽さを損なうことなく振動板に求められる強度を確保しました。
レーザー変位計で観察すると、一般的な金属振動板は駆動時に様々な方向へ微小変形し、これが歪みの原因となりますが、トゥルーマグネシウムの場合、その曲げ剛性の高さによって振動板全体の変位が極めて小さく、振動板表面で発生するノイズを最小限に抑えていることがわかりました。開発チームは、A10000の開発で培ったダイヤモンド振動板の製造・成形技術も応用し、ベリリウムに依存しない新たな超低歪DUの実現を目指しました。

<エッジの最適化>
マグネシウムはベリリウムよりも軽量なため、フィルム系エッジが重量に負けてローリングするという問題は生じにくくなりました。一方で、一般的なエッジ素材では特定の周波数で共振が起こる、分割振動の問題は素材が変わっても避けられません。そこでA10000開発で確立した特殊ポリウレタンを同様に採用。軽量かつ高い弾性・伸縮性を兼ね備え、振動板の動きやすさと不要な共振の抑制という相反する要件を両立しています。
<振動板成形技術>
一般的な接着剤による貼り合わせではなく、圧空成形と金型による熱成形を組み合わせて接着剤レスで分子間結合させる独自の成形技術を適用。振動板とエッジ間の接着剤が引き起こす塗布量の差による個体差といった問題を根本から解決しています。
<自社製ボビン付ボイスコイルの開発>
ボイスコイルの引出線をエッジに接着せず空中配線とすることで、振動板の正確なピストンモーションを妨げない設計を踏襲。断線を防ぐため、線材にはfinalオリジナルのアルミ合金線材を採用しています。
<超低歪DUの完成>
上記素材・成形技術の開発により、トゥルーマグネシウム振動板を搭載した新開発DUは、10Hz付近の超低域において、A8000のトゥルーベリリウム振動板と比較しても歪み率をさらに低減することに成功しました。

高剛性ステンレス切削筐体
筐体には、剛性の高いステンレスを精緻に切削加工した削り出し構造を採用。ドライバーを強固に支え、不要な振動を抑えることで、音の輪郭を明瞭にする設計となっています。
仕上げは、鏡面研磨にIP(イオンプレーティング)加工を施し、深みのあるネイビーカラーを実現。塗装とは異なり、金属の質感を保ったまま発色できるのがIP加工の特長で、経年による色褪せや剥がれが起きにくく、削り出しのステンレスの金属感を活かした仕上げです。

長期使用を考慮し、修理を容易にする設計
筐体の組み立ておよびDUの取り付けに接着剤を使用せず、設計難度の高いネジ止めを採用することで長期的な修理が可能。また、ネジの締結力によって各部品は強固に支えられ不要な共振を抑制します。

接触面積の少ない優れた装着感
イヤホンの装着感が優れているか否かは、圧迫感で決まります。人間工学を謳い有機的な形状を選択するなど、シリコンの反発力で保持する方法は一見正しく見えますが、常に耳に力がかかることとなり、気付かない内に耳へ負担をかけ、疲労が蓄積します。有機的で大きな面で耳に接する形状に比べ、接触面積を限定する形状により、圧迫感の無い装着感を目指しました。そのため、多くの方の耳に適合します。接する点全てに圧迫感が無ければ、これほどイヤホンの装着は快適なのかと感じていただける、まるでカスタマイズイヤホンであるかのような優れた装着感となっています。また、A8000と比べて筐体サイズが小さくなっておりますので、耳に一層収まりやすくなっています。

高精度自社製MMCXコネクター採用のePTFEシルバーコートケーブル
スーパーコンピューター「京」用の信号の伝送速度を追求したケーブル開発、製造していることでも名高い潤工社との共同開発品。線材には、潤工社がジュンフロンブランドとして長年培ってきたノウハウを結集させたシルバーコートOFC線を、絶縁被膜には従来のPFA(フッ素ポリマー)よりもさらに低い誘電率を誇るePTFE(発泡テフロン™)を採用。
MMCXコネクターは従来の自社開発品の信頼性を高めたさらに高精度なものへと設計変更されています。2PINはピンそのもののバネ性に抜去力を頼るため、構造上耐久性を持たせにくく、長期的な信頼性においてMMCXを採用しています。
※本モデルのMMCXコネクターは高精度品のため特に挿抜がしにくい設計となっています。故障による交換以外を目的としたリケーブル及び端子の挿抜を推奨しておりません。

「FUSION-G」と「TYPE P」の2種類のイヤーピースを同梱
本製品には、「FUSION-G」と「TYPE P」の2種類のイヤーピースを、いずれもSS/S/M/L/LLの5サイズずつ同梱しております。
イヤーピースケース付きです。
<FUSION-G>
超密度フォーム×柔らかシリコン×高弾性シリコンの3素材を組み合わせたトリプルハイブリッド構造により、高い遮音性と圧迫感のない快適な装着感を両立しました。
「超密度フォーム」は薄型設計で、指で潰さずに装着が可能です。これにより圧迫感が少なく、高い遮音性を実現しています。また、シリコンタイプと同様の形状を採用しているため、音質の傾向が変わってしまうということが少なく、ご使用中のイヤホンの本来の音質を引き出します。
<TYPE P>
音導管部分と耳に触れる部分とで硬度が異なる2種類のシリコン素材を採用。音導管部分には、耳に触れる部分に比べて硬度が高めのシリコンに溝加工を施すことで強度と柔軟性を両立しています。
耳に触れる部分には柔らかいシリコンを採用し、快適な着け心地と高い遮音性を実現しました。軸色を片方はグレー 、もう一方を赤にすることでイヤーピースを少しめくってイヤーピースの軸色を確認することで、 薄暗い場所でも左右の見分けがつきやすくなっています。

交換可能なダストフィルター
ダストフィルター部分は耳垢等によって開口部分が汚れる場合があります。A8000 DCでは、ダストフィルターをお客様自身で交換可能な形状としており、交換用のダストフィルターとダストフィルター装着時に使用するメンテナンスツールを同梱しております。
※あらかじめダストフィルターを装着した状態で製品を出荷しておりますので、新品開封時に別途お客様に装着していただく必要はございません。しばらくご使用いただいた後にダストフィルターが汚れた際は、お客様ご自身で付属のダストフィルターとの交換をお願いします。交換方法は取扱説明書をご参照ください。

付属品
キャリーケース、イヤーピース(FUSION-G 5サイズ、TYPE P 各5サイズ)、イヤーピースケース、 MMCX ASSIST、メンテナンスツール、ダストフィルター、シリコンシート、筐体保護テープ、筐体保護ポーチ、補助プレート
装着方法
本製品は耳掛けタイプのイヤホンです。ケーブルを耳に掛けることで、タッチノイズが耳に伝わることを防ぐことができ、快適に装着することができます。
STEP1 本体内側にあるRとLのマークを確認します。Rが右でLが左です。
STEP2 ケーブルを耳の後ろから前に向かって掛け、イヤホンのイヤーピース部を耳に挿入します。
STEP3 耳甲介(耳のくぼみ部分)にイヤホンがフィットしにくいときは、
耳たぶを後方やや上方に引っ張りながらイヤホンを収めます。
※耳穴への収まりが緩く感じる場合は適宜イヤーピースのサイズを変更してください。
左右でサイズが異なる場合もございます。
| 筐体 | ステンレス |
|---|---|
| ドライバー | ダイナミック型(トゥルーマグネシウム振動板) |
| コネクター | MMCX |
| プラグ | 4.4mm |
| ケーブル | ePTFE被膜シルバーコートケーブル |
| 感度 | 98dB/mW |
| インピーダンス | 13Ω |
| 質量 | 62g |
| コード長 | 1.2m |












